元興寺
行った時期:平成25年7月下旬
天気:薄曇り
正式名:元興寺極楽坊
移動手段:鉄道
桔梗、波斯菊、百日紅、芙蓉といった季節の花が古寺を彩る。
秋になれば萩や彼岸花がそれはまた見事である。
波斯菊はハルシャギクと読む。
小さな五輪塔群の合間にわんさか咲いていた花だ。
風化の進んだ塔によく馴染んでいて情趣があった。
草木の手入れをしていらした僧侶の方に訊ねて、
その名前を教えてもらった。
ハルシャとはペルシャのことらしい。
波斯菊は中東からやってきた菊というわけだ。
奈良でペルシャと聞けば思い浮かぶのは正倉院の宝物である。
異国人をかたどった鉤鼻の伎楽面、幻想的な深いブルーの硝子細工。
はるか大陸の西の彼方からシルクロードを渡り、
船に揺られて運ばれてきたこれらの工芸品と一緒に、
この植物もくっついてきたのだろう。
その舶来の可憐な花を、平城の貴人たちは
たいそう気に入って愛でたことだろう。
などと遠く天平の情景にロマンを馳せていたのだが、どうも事実は全く違うらしい。
調べてみれば波斯菊の原産地は北アメリカであるとのこと。
しかも日本に持ち込まれたのは明治の初期であるという。
つまりペルシャやシルクロードとは、何の関わり合いもないというのである。
天平のロマンなどとは見当違いもいいところではないか。
言葉のイメージだけで、私は勝手にトンチンカンな空想に耽っていたわけだ。
ただそれがゆえに、この波斯菊は妙に心に残っている花なのである。
東門
本堂
本堂左側
日本最古の瓦が使われている屋根。有名なアングル
巨大な蹲(つくばい)。札に「飲めます」とある。飲んでみればよかった。
石仏群と桔梗
五輪塔群と波斯菊
本堂右側の百日紅